SEEDS ON WHITESNOW
20世紀の神の視点としてのリアリズム - 平塚と練馬の磯江毅 -
磯江毅の世界に始めて触れたのは昨年の初冬、ひっそりと行われた平塚市美術館の特集展示だった。はじめて経験する磯江の世界の巨大さ深さそして論理に圧倒されながら、十分に時間を取らずにこの会場へ来てしまった自分を恨み、リベンジの機会を祈願していたら、思い掛けなくその機会は早く訪れた。しかもさらに規模を拡充しての展示らしい。その場所は中村橋の練馬区立美術館、冬の入口とは正反対の酷暑の中でのこと。
戦争の記憶 - 藝大創造の杜 クセナキス特集 -
隔年で20世紀の大規模オケ作品を取り上げる芸大の創造の杜、今年はクセナキス(詳細は公式ページ)。演奏されたのは「メタスタシス」「ピソクラスタ」「イオルコス」「シルモス」「デンマーシャイン」の五曲。「メタスタシス」「ピソクラスタ」「シルモス」は1950年代、特に「メタスタシス」はクセナキスの名前を一挙に高名とした作品。そして、残りの「イオルコス」「デンマーシャイン」はもう晩年といってもいい、1990年代の作品ということで、その間40年もの開きがある。やはりというか、1990年代の二曲は日本国内未上演ということで、今日が日本初演。
「静寂」から「言葉」に向けての苦難 - ハイドン「十字架上の七つの言葉」を聴いて -
それは1785年のことだった。エステルハージ家の元で音楽家を務めていたハイドンに、遠くスペインから風変わりな宗教作品の依頼があったのは。その結果生まれた「十字架上の七つの言葉」という管弦楽向け作品は、弦楽四重奏、ピアノ、そしてオラトリオに編曲され、結果としてこの時代を反映した重要な作品の一つとなった。ただ、演奏は難しい作品のはずだ。なぜなら、この作品が狙う死の間際でのキリストの言葉の表現のためには、その「言葉」だけではなく、その言葉を発することの苦しみの領域に立ち入っていく必要があるだろうから。21世紀において、そのような演奏に出会うことは、稀ではあるけど、実演やCDを通じて、確かに出会うことはできる。
シューマンからバッハへ - ヴァイオリン協奏曲と無伴奏ヴァイオリンソナタ -
それは先週土曜日、石田泰尚氏のソロとシュナイト指揮神奈川フィルによるシューマンのヴァイオリン協奏曲を聴いている最中のこと。この一見晦渋な協奏曲、今日はこれを聴きたくてやってきたのだけど、今まであまり意識していなかったこの協奏曲のバロック的な側面が、少しづつ浮かびあがってくるように感じられて仕方がない。これはもしかして、、、という思いをかかえたまま、急ぎ帰宅したら自宅にて資料を開いてみたら、ああ、やはりそうだったのかと。この作品は明らかにシューマンからのヨハン・セバスティアン・セバスティアンバッハへのオマージュだったのではないかと。
シューベルトの未完成の交響曲達の補筆を巡って(その6) - グムンデン=ガシュタイン交響曲の幻影を追って -
このシリーズでは、これまでにペーター・ギュルケやブライアン・ニューボールドの補筆完成版などを通じて、シューベルトが未完成のまま交響曲の断片を紹介してきた(前回はこちら)。ただ、シューベルトのまだ見ぬ交響曲の姿を求めて、後生がオーケストレーションを施すという動きは、これらだけではない。その長大さ、そしてピアノや室内楽の枠組みをはみ出したスタイルゆえに、後期作品のオーケストレーションがいくつか存在している。そのような試みの背後には、1825年に作曲された言われたグムンデン=ガシュタイン交響曲という幻影の影響がある。さらには、この動きには、ヴァーグナーとハンスリックの対立、そして、19世紀以降の現在も続くロマン主義の影響も感じとれる。このエントリーでは、このシリーズの最後として、これら後期作品のオーケストラ編曲版を簡単に紹介する。
2007年を振り返って - CD/DVD&コンサートから5つを選ぶ -
一つもエントリーをアップしないままに12月が終わろうとしていますが、2007年の一年間に、買ったCDやDVD&出掛けたコンサートのなかから、印象に残ったベスト5を絞ってみました。およそ、今年についてはCDは約50枚、コンサートは約20回程度という状況は、昨年よりも少なめではあるのですけど。
生命の樹は花を宿すか - 北とぴあのモンテヴェルディ「オルフェオ」を見て -
昨年のハイドン「月の世界」に続く、北とぴあ国際音楽祭のメインのオペラ公演となったモンテヴェルディの「オルフェーオ」(以下、一般的な表記の「オルフェオ」に統一します)。直前まで行くべきかどうか迷っていたのですが、やはりこの作品を今年聴かずにどうするか、という思いから、結果として当日券購入モードで行ってきました。東西混合というコンセプトのなかで、モンテヴェルディの音楽に感じたものは、若者の愛の物語という悲しいストーリーを超えた、神秘主義のエッセンスでした。
クラシック音楽関連ショップ・資料館情報(新宿編)
約2年ぶりに、クラシック関連のショップや資料館の情報をアップします。今回の場所は新宿駅周辺。交通至便・在庫充実なディスクユニオン、新宿駅直結のタワーレコード、そしてタイムズスクエアのなかにある地味なHMVの3店を紹介します。
2008年古楽演奏家来日予定情報
いよいよ10月も終わりに近づき、来年2008年の予定も視野に入れるべき時期になりました。ここでは、「音楽の友」9月号に掲載された「来日演奏家速報2008」に、各マネジメントやコンサートホールのウェブサイト等から集めた情報を加えて、2008年以降の古楽系演奏家の来日情報をまとめてみました。来年も例年以上にビッグネームが並び、東西ヨハネ対決や、クイケン、ガッティ、マンゼ、シュミットらのバロック・ヴァイオリンまとめ聴き、ニケの大編成ヘンデルなど、またもや選択に困る一年になりそうです。
ハイデルベルガー・シンフォニカー武蔵野公演を聴いて
これまで、ヴィオラ奏者矢崎裕一さんのインタビューや指揮者トーマス・ファイからのメッセージを掲載して備えてきたハイデルベルガー・シンフォニカー(ハイデルベルク交響楽団)の来日。本当に来るのだろうか、とドキドキしながら金曜日、無事に武蔵野公演(PDF)を聴くことができました。一体彼らの生演奏は、どのような演奏なのか、その場で得られた回答は、期待を通りの素晴らしさであったとともに、できれば、また日本の優れたホールで聴いてみたいという、次に向けた期待を喚起させるものだったように思います。


